福岡県柳川市のハリウッドワールド美容専門学校の学校行事のバーベキューで、男子生徒が1名死亡する事故が起こったのはなぜか?
- 炭に消毒用アルコールをかけた
というにわかに信じられない原因が伝えられ、多くの疑問が浮かぶこの事故ですが、その他にも考えられる原因がありそうです。
なぜこのような事故が起こってしまったのかを、
当時の状況や原因などを調べながら、このような場合の適切な対処法もまとめてみました。
「いざという時に知っておくべき知識」だと思いますので、是非最後までご覧ください。
▼「アルコール追加投入を指示したのはバーベキューに参加している理事長だった」という生徒の証言を調査・検証した記事
目次
【ハリウッドワールド美容専門学校BBQ死亡事故】詳細
まずは、今回の死亡事故があった状況をまとめてみます。
- 福岡県柳川市のハリウッドワールド美容専門学校で起きた
- 2023年5月24日午後1時前に「バーベキューの火が洋服に燃え移った」と学校から119番
- 学校敷地内の屋外で、全校生徒約470人が参加してバーベキューを行っていた
- ドラム缶12台に、着火剤や炭のほか、火が付きやすいように手指消毒用アルコールを混ぜていた
- うち1台の火が消え、男性教員がアルコールを追加したところ爆発的に炎上
- ドラム缶から生徒4人に燃え移り、重症だった18歳男性が死亡。他の3人は快方に向かっている。
- 学校は保護者向け文書で「職員の安全ミスで事故を発生させた」と謝罪
- 男性の死亡を受け、7日に再度謝罪文を出し、同日から臨時休校することを伝えた。
- 学校はバーベキュー食事会を年4~5回開催。
- アルコールの使用は今回が初めてだった。
- 「熱中症や肉の生焼けを防ぐため、短時間でしっかり焼こうとアルコールを使った。命の代償を大きく考えています。申し訳ないでは済まされません」と古賀郁(ふみ)学園長は謝罪。
- 関係者によると、食事会は救急搬送後も続けられた。
- 新聞社に情報が寄せられ、事故が明らかになった。
参考:西日本新聞
【ハリウッドワールド専門学校BBQ死亡事故】現場での問題点
あまりにもツッコミどころが多すぎて何から指摘して良いか分かりませんが、問題点を1つ1つ見ていきましょう。
①消毒用アルコールの扱い
まず一番批判されるべき点は
「火気に手指消毒用アルコールを混ぜてバーベキューをした」
という事実でしょう。
「小学校で習う理科の知識を持っていたら、このような危険なやり方はできないはず」とは筆者は感じてしまいますが、知らない方も多いということなのでしょうね。
コロナで消毒用アルコールを使い始めた際、それぞれが今一度用法を確認しているものと思っていましたが、
逆に常に携帯する身近な存在になってしまったが故、危険性を感じなくなってしまったという意識もありそうです。

出典:東京消防庁
教員・生徒合わせて500人弱の人がいて、その点に気づいて誰一人改善しなかったことがとても不思議です。
②【考察】消毒用アルコールが揮発していた
校長も「熱中症を防ぐため—」と話していたように、
事故当日の2023年5月24日の柳川市周辺の天気は晴れで、気温は25度以上あった模様。
また調べたところ、アルコールの性質として以下の特徴があります。
・蒸発しやすい性質を持っていて高温になる場所に保管していると「可燃性蒸気」が発生
・「可燃性蒸気」は、空気より重く、低い場所に溜まりやすい。
ことのことから恐らく、下記の経緯で爆発を伴った炎上が起きたのだと思われます。
- 直射日光や高温になる場所に保存していたアルコールが「可燃性蒸気」となって周囲に充満していた
- 教員がアルコールを投入したことで、周囲に充満している「可燃性蒸気」へ火が届く道筋が出来て大爆発を起こした。
「揮発したアルコールの危険性」については、下記の福岡市消防局の動画が非常に分かりやすいので、ご覧ください。
「アルコールは引火しやすい」は知っていても
「アルコールは蒸発しやすく、蒸気にも引火する」というのは、明確に認識していない方も多いかもしれません。
(筆者は「そう言われればそうか」程度で、蒸気に引火するとは明確に認識がありませんでした)
③【考察】アルコールが引火した火は見えにくい
ちなみに、アルコールが引火した火は見えにくいとのこと。
こちらも、下記の福岡市消防局の動画が非常に分かりやすいので、ご覧ください。
福岡市消防局、素晴らしい仕事されてますね。

出典:【福岡市消防局公式】アルコールに引火した炎は見えにくい!?
これ、もう火が付いている状態なんですよ。全然わからないですよね。
バーベキューも天気の良い野外で行うことが多く、このように火が見えずに洋服に燃え移りやすかったということも考えられますね。
【追記】④着衣着火に気づかなかった
上記の「アルコールが引火した火は見えにくい」の弊害が、実際に起こっていたということです。
亡くなった男性生徒についた火が見えづらく、「熱い熱い」と叫んでいたものの、周囲の学校関係者は何が起きているのか把握できていなかったとのことです。
「一番重傷を負った18歳の男子生徒は『熱い熱い』と最初は叫び、もがいていていたといいます。しかし、男子生徒についた火が青く見えづらかったため、学校関係者は何が起きているかよくわからなかったということです」
yahooニュース
亡くなった生徒さんのことを思うと、胸が痛みますね。
少しでも火や火災、アウトドアに詳しい人がいたならばと悔やまれます。
ハリウッドワールド専門学校BBQ死亡事故から見る対処法
これらの問題点を踏まえて、今後私達が知っておくべきことは何でしょうか。
①着火に薬剤は使わない
まず大前提は「着火に薬剤は使わない」ということです。
必ず専用の着火剤を使いましょう。
また、市販の専用着火剤でも継ぎ足しすることは厳禁です。
柔らかいポリ容器から絞り出して使うゼリー状のものは、火が弱い時は継ぎ足したくなりますが、
着火剤の成分はメチルアルコールなどで揮発性・燃焼性が高いものが多いことから、
継ぎ足ししている手を伝って火が衣服に燃え移る可能性があります。
着火剤は、火を起こす前に炭に足し、後から追加投入はしないようにしましょう。
②着衣着火時の対応「ストップ、ドロップ アンド ロール」(止まり,倒れて転がる)
衣服に火が付いた場合は、
- すぐ服を脱ぐ
- 水をかける
ことが一番良いですが、すぐ手元にない場合もあると思います。
もし水がないところで衣服に着火してしまった際の対処法は、
「ストップ、ドロップ アンド ロール」(止まり,倒れて転がる)です。
ご存じの方も多いと思いますが、
火は「上に燃え広がる、また燃えるには空気が必要」なため、
横になって転がることで、気道などへの延焼を防ぎ、火に届く空気を遮断することができます。
顔面に炎を浴びると呼吸困難になって酸欠になったり、気道熱傷になってしまって治癒も難しくなりますので、まずは床や地面に押し付けるように転がって消火することを心がけましょう。
また、走り回るのは絶対にNGです!
風が起きて火の勢いが増しますのでご注意を。
③火傷を負った場合はとにかく水で冷やす
そして衣服の火が消えても、火傷を負っている場合は救急車が到着するまでとにかく冷やし続けてください。
「寒くて震えたとしても、冷やすことを優先するべきだ」と専門家の方は話しています。
(今回亡くなった男子学生の方も「全身熱傷」で亡くなっているそうで、火傷の熱が残って体内に浸透して組織を壊してしまったと考えられます)
今回、火傷への現場の対処がどうだったかは定かではありませんが、
「火傷は流水をかけ続けるなどしてとにかく冷やすことが大事」ということは、絶対に覚えておきたいですね。
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ハリウッドワールド美容専門学校BBQ事故なぜ?アルコール炎上した経緯と正しい対処法 あとがき
知っているつもりでもその場になったら行動できなかったり、
無知や想像力欠如により、危険な行動をしていることもあるんじゃないかとも思い改めました。
「いざという時に知っておくべき知識」をしっかりと身に着けて、それぞれが気を付けて、二度と同じような事故を起こさないようにしなくてはいけませんね。
志半ばで若くして亡くなった男性のご冥福を心からお祈りいたします。
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